今夜も息子メシ
がっちゃんが入院してからずっと、長男タロが夕食当番を買って出てくれている。
今夜は鮭のホイル焼き。
大根とわかめのお味噌汁も作ってくれた。
「オレなんにも役に立てないから晩メシ作るよ」
毎日遠方の病院まで通い、手続きやら何やら細かい事務作業にバタバタしていたから、その言葉、本当に嬉しかったよ。
実は、変わり果てた父がっちゃんの姿を見るのが辛かったみたいだ。
「食いたいものしか作りたくない」
そう宣言して、連日洋風こってり肉攻めメニュー。
「たまにはヘルシーな和食が食べたいよ」
ワガママな母のリクエスト、覚えててくれたんだね。
次男ジロは。
頼りない母の付き添いとして、医師の説明や病院のサポートセンターにも、いつも一緒に来てくれた。
ひとりで聞くより、やっぱりふたり。
おっちょこちょいな母の記憶違いや勘違いを、ジロはキチンと指摘する。
がっちゃんは左側の被殻出血。
かなり大量広範囲の出血で、脳の損傷が酷くて重い後遺症が残るそうだ。
「先生はああ言ってるけどさ、あんな状態から助かったんだもん、何だか父さん、意識戻りそうな感じじゃない?」
とか
「目を開けた!こっち見た!何か言いたそうにモグモグしてた」
とか大騒ぎする母に
「あんまり期待しない方がいいよ」
「口動かしてたのは、痰が絡んでたからじゃないの」
「意識戻ったらそれはそれで可哀想だよ」
……なんて冷静な息子たち。。。
今はコロナとインフルで、病院は厳重な面会制限中。
ずーっとがっちゃんの顔も、見ていない。
息子たちがいるから、アタシはきっと大丈夫。
楽しんでるよ、さんにん暮らし、気ままな毎日。
でもね、こんな夜は思うことがある。
今頃どうしているのかなぁ。
やっぱり夢は、見てるのかなぁって。