まさか こんなところで
来週はがっちゃんの会社に退職の挨拶に行くので、少しはキチンとしようと、ブラウスを買いに行った。
土日の大型店は人が多そうなので、金曜夕方、小さな店へ。
狙い通り(笑)店はすいていた。
服を見るのも久しぶり。
すっかり春から初夏な感じの店内。
お目当てを探して歩く。
スーパーとドラッグストアばかりだったなー、最近。
気になるデザインを選び、試着。
うーん、どうだろ?
脱いだり着たりを繰り返し、結局最初の1枚かなーと試着室の鏡を見ている時に、スマホに着信があった。
病院からだ。
最近は慣れて来て、最初の頃みたいにうろたえたりはしなくなったけど。
看護師さんからの電話で、がっちゃんのフルネームを言い、「○○さんのことなのですが……」という切り出し方。
慣れて来たとは言え、何となく神妙な感じになる。
がっちゃんのお尻に、床擦れが出来たらしい。
「今日、専門の先生に診てもらいました」というくらいだから、かなり痛々しいのかな。
そしてどうやら、お腹も壊しているみたい。
元気な時から、お腹が弱かったがっちゃん。
息子たち…タロとジロも、がっちゃんに似てしまい、我が家の男どもは毎日のようにトイレの取り合いをしていたっけ。
がっちゃん……今は流動食なのに、ねー。
でも熱も上がったり下がったりしているというから、体調がイマイチなのかな。
そんなことを考えていたら看護師さんが言った。
「それから、カバータイプのおむつがそろそろなくなりそうなので…」
ああ、またおむつ。
この前届けたのは、えーと、2週間くらい前?
枚数の多目なのを買ったつもりだったけど、お腹壊してるんだもんね。
分かりました、伺いますと言って電話を切ったけど。
まさかこんなところで、脳出血で意識不明の夫のおむつの話をしているなんて、誰も思いもしないだろうな。
この店も、かなり前から知っているけど、まさか試着室でこんな話をしようとは。
人生ってほんと、何があるか分からないよね。