36日ぶりの再会
晴れたり降ったり曇ったり…そんな目まぐるしい天気の朝。
次男ジロと病院へ向かった。
夜中、いつ電話がかかって来るかと不安になりながら寝た割には、よく眠れてしまったアタシ。
電話…なかった…良かった……!
病院に到着して、少し待つ。
意外と沢山の人が診察に来ていて、中にはマスクしていない人もいる。
アタシもジロも、そして長男タロも、がっちゃんが倒れてから外出時は絶対にマスク。
風邪でもインフルでもコロナでも、アタシたちが罹っちゃったら、がっちゃんはどうなる?
絶対に元気でいなきゃ!
それが今の我が家の鉄則になっている。
少しでも、出来ることをしたいと思う。
がっちゃんが生きててくれること。
それがアタシたち家族の張り合いなのだ。
しばらく待って、診察室に呼ばれた。
転院の時以来の主治医との対面だった。
昨日、がっちゃんは血圧がかなり下がってしまい、酸素濃度も低く、呼吸がかなり辛そうな、危険な状態だった。
でも今朝になって血圧が安定し、酸素マスクも外せるくらい、回復したのだという。
良かった………。。。
安堵で力が抜けていく。
先生は脳のCT画像を見せてくれた。
「かなり出血は吸収されましたね」
転院時の画像に真っ白く写っていた影が、今はもう消えている。
でもその付近に、空洞のように黒々としたところが見える。
脳が損傷を受けた部分だ。
先生は言った。
もしまた昨夜のように急変することがあって、状態が悪いようならどうしますか?
心臓マッサージのような処置を望みますか……?と。
延命治療をするかどうか、という確認だった。
がっちゃんくらいの年齢の人には、あまり言わないのだけれど、この脳の状態ではおすすめしません、と言い辛そうに付け加える。
入院する時にも、それは確認されていた。
そして、いつでも撤回出来ますから、とも。
延命治療は、望まない。
でも、脳の…人間の生命の可能性を、奇跡を望んでる。
それは今までも、これからも変わらない。
がっちゃんが頑張ったご褒美に、先生が特別に面会の許可を出してくれた。
がっちゃんに会える!
関所のようなナースステーション前で、体温を計る。
37℃あると面会出来ないらしいので、ドキドキする。
最近の緊急事態宣言を受けて、体温のチェックがかなり厳しくなったようだ。
36.8℃…セーフ!
それから念入りに手を消毒して、ビニールのエプロンを着けた。
声をかけるのはいいけど、触ったりはしないでくださいね、と看護師さんから注意事項を聞いて、病室へ。
外がよく見える、窓際のベッドにがっちゃんがいた。
「来たよーー!」
感無量。
「がっちゃん、よく頑張ったね〜」
「火曜日、がっちゃんの会社に行って来たよ」
がっちゃん、アタシ話したいことが沢山あるよ。
がっちゃんは昨日の疲れか、眠っているようで目を開けない。
がっちゃんの意識が本当にないのかあるのか、今日はしっかり確かめてやろうと思ってたのに。
朝早くは目を開けてましたよ、と看護師さんが教えてくれた。
残念!
36日ぶりに会えたのに。
でも、たまにモゴモゴと口を動かして、何か話しているように見えたのだ、確かに。
まるで夢でも見てるようだね、がっちゃん。
がっちゃんの脳の空洞は、楽しい夢でいっぱいになってるんじゃないのかな。
だからずーっと起きて来ないんだね、がっちゃん。